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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
巡査が来て、一応検べるなんぞッて事になりかねません。ええ、後はどうなるッて、お前さん、掏摸は現行犯ですからね、証拠が無くって、知らないと云や、それまででさ。またほんとうに掏られたんだか何だか知れたもんじゃありません、どうせ間抜けた奴なんでさあね、と折革鞄を抱え込んだ、どこかの中小僧らしいのが、隣合った田舎の親仁に、尻上りに弁じたのである。
いずれ道学先生のために、祝すべき事ではない。
あえて人の憂を見て喜ぶような男ではないが、さりとて差当りああした中の礼之進のために、その憂を憂として悲むほどの君子でもなかろう。悪くすると(状を見ろ。)ぐらいは云うらしい主税が、風向きの悪い大人の風説を、耳を澄まして聞き取りながら、太く憂わしげな面色で。
実際鬱込んでいるのはなぜか。
忘れてはならぬ、差向いに酒井先生が、何となく、主税を睨むがごとくにしていることを。
三十五
鬱ぐも道理、そうして電車の動くままに身を任せてはいるものの、主税は果してどこへ連れらるるのか、雲に乗せられたような心持がするのである。
もっとも、薬師の縁日で一所になって、水道橋から外濠線に乗った時は、仰せに因って飯田町なる、自分の住居へ供をして行ったのであるが、元来その夜は、露店の一喝と言い、途中の容子と言い、酒井の調子が凜として厳しくっ