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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

来るか来ないかは分らないのだけれど、この外に分別がなかったのである。一時間ばかり待っていて、救世軍の婦人から、「鬨の声」を売りつけられた時、自分の悧巧でないことが少し分った。そこへ絹子さんのお父さんがやって来た。

「これはいけない」

と気がついて、品川駅前へ河岸を替えた。高輪から吉祥寺へ行くのなら、市電をこゝで下りて省電に乗るのが順路だ。俊一君は又一時間ばかり立っていて、又「鬨の声」を一部買った。益※(二の字点、1-2-22)自分の愚かさを感じたが、序だと思って、尚お少時辛抱した。十一時半に、

「駄目だ。これは盥の中へ釣針を下しているようなものだ」

と大悟一番して、諦めをつけた。

しかし絹子さんに会わずにはいられない。俊一君は次の日曜に性も懲りもなく、又試みる気になった。但し前週の失敗以来考えている。

「遊びながらのお稽古に朝から出掛ける筈はない。行けば昼からだ」

と結論して、手段も更に適切に、吉祥寺へ一散に駈けつけた。必ずしも確信があったのではないが、偶然の成功は期待の尠い時に起る。絹子さんは次の電車で来た。

「あらまあ!」

「絹子さん!」

「何処へ?」

「何処へじゃありませんよ」