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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

と俊一君は興奮して、先週来の苦心を打ち明けた。

「私、嬉しいわ」

「吉祥寺の何処? いらっしゃるところは」

「公園の側よ」

「何時間かゝって」

「宜いのよ、寄らなくても」

「はあ」

「散歩しましょうよ」

と絹子さんも同じ思いだった。

ピアノの先輩は美事利用された。これが第一回の井の頭公園散策だった。俊一君は大阪へ手紙を出しても返事の来ないことを訴えて、

「余りです」

と憤慨した。

「でも大丈夫よ」

「何故ですか?」

「お互にその積りでいれば宜いじゃありませんか?」

「それは然うですけれど」

「私、いつまでもお待ちしますわ」

「待つ必要なんかないですよ。平塚君が意地悪をして態と待たせるんです」

「態とってこともないでしょうけれど」

「それじゃ何故でしょう? 僕には道理が分りません」

「都合があるんでしょう」

「何んな都合?」

「自分都合よ。兄さんは何でも自分勝手ですもの」

「実際昔から我儘です。あなたの前で悪口を言っちゃ済みませんけれど」

「あんな兄さんでも家にいてくれる方が宜いと、私、この頃、ツク/″\思ってよ」

「何故?」

「兄さんがいないと、あなたに会えませんもの」

「僕もその意味で平塚君が懐かしい。