轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こをうばう

子を奪う

豊島 与志雄

「中央公論」1921(大正10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,292 字 · 80 页

青空文庫

「それ位は仕方がありますまい。」彼女の答えは落付いていた。「兼子さんに児が出来ないとすれば、他から何とかするよりも、その方が都合よくはありませんかね。第一兼子さん自身でそうしたいといってることですし……。」

否々、と彼は心の中でくり返した。そのことを考え出したのは、兼子自身ではない、また幾代自身でもない。それは二人の間の空気、善良な女性としての二人の間に醸し出された空気、に違いなかった。

「お母様からお話がありましたでしょう。」そういう風に兼子は彼に云った。「……私も是非そうしたく思いますわ。どうせ自分には児がなさそうですから、その子を自分の子として育てたいのです。」

「然しそれは、お前の本当の心から出たことではないだろう?」と彼は云った。

「いいえ、いいえ、私からお母様にお願いしたのですわ。」

彼女の顔は晴々としていた。夢みるような眼で、彼の眼をまともにじっと見返した。彼は視線を外らして、額を掌で支えた。

子供のないことが、血を継ぐべきもののないことが、一家の母としての女性にとっては、また一家の妻としての女性にとっては――幾代と兼子とにとっては――如何なるものであるか、それを考えると、彼は泣いていいか笑っていいか分らない気持ちになった。