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こどものじぶんのはなし
子供の時分の話
小川 未明
「おとぎの世界」1919(大正8)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,307 字 · 11 页
このあめ売りじいさんは、城跡の入り口のところに、いつも屋台を下ろしました。そして、村じゅうの子供を呼び寄せるように、遠方を望んで、チャルメラを吹き鳴らしました。じいさんは、もういい年であったとみえて、目のしょぼしょぼとした小じわのたくさんな顔が日に焼けて、黒い色をしていました。
けれど、私は、またこんな無愛想なじいさんを見たことがありません。多くの子供が、こうしてなつかしそうに、慕わしそうにそのそばへ寄ってきましても、つい一度として笑った顔も見せなければ、戯談をいって喜ばせてくれたこともなかったのです。
こうして、そこに二、三十分も屋台を下ろして休んでいますが、もうあめを買ってくれる子供がいよいよないとわかると、じいさんは黙って屋台をかついで、お城の中を通って、かなたの村の方へといってしまいます。私は、いつもさびしそうにして、おじいさんの消えてゆく姿を見送りました。
昔からある、城の門の四角な大きい礎石は、日の光を浴びて白く乾いていました。草は土手の上にしげっていました。そして、小鳥は四辺の木々のこずえに止まってないていました。北の方から、悲しい風が吹いてきて、ほおをなでたのであります。