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こどものじぶんのはなし

子供の時分の話

小川 未明

「おとぎの世界」1919(大正8)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,307 字 · 11 页

青空文庫

「さあ、家の方へ帰ろうよ。」と、友だちの一人がいいますと、

「ああ、帰ろう。」と、みんながいって、家のある方へと帰っていきました。

「君、河へ泳ぎにいこうか。」と、中の一人がいいますと、

「ああ、泳ぎにいこう。」と、あるものは同意しましたけれども、また、あるものは、

「僕、河へいくとお母さんにしかられるから、いやだ。」と、ゆくのを拒んだものもあります。

「弱虫だなあ、じゃ、僕らだけ泳ぎにいこうよ。弱虫なんかこなくてもいいや。」と、二、三人が、一つになって途中から別れて、田舎道を歩いて河のある方へといったのであります。

私は、いつもその弱虫の中に入っていました。私の祖母や母親が、河へいくことを危ないといってきびしくしかったからです。そして、私はいつも弱虫の仲間に入って、家の方へと帰っていきました。

そればかりでありません。私の祖母や、母親は、私を家の前からけっして遠くへはやらなかったのであります。

「一人で、遠くへゆくと、人さらいがきて連れていってしまうから、家の前から遠くへいってはいけない。」と、つねにいいきかされていたのであります。

だから、遊ぶ友だちのない、ただ自分一人のときは、ぼんやりとして、日の当たる路の上に立っていました。