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こどもはばかでなかった
子供はばかでなかった
小川 未明
「国民新聞」1931(昭和6)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,227 字 · 5 页
吉雄は、学校の成績がよかったなら、親たちは、どんなにしても、中学校へ入れてやろうと思っていましたが、それは、あきらめなければなりませんでした。
「なにも、学校へいったら、みんなが偉くなるというのでない。りっぱな商人には、小僧から成り上がるものが多いのだよ。家にいては、なんのためにもならぬから、いいとこをさがして、奉公なさい。そして、お友だちに、まけないようにしなければならぬ。」と、お母さんは、いいました。
いままで、小学校時代に、仲よく遊んだ友だちが、それぞれ上の学校へゆくのを見ると、うらやましく、お母さんには思われました。
「なぜ、うちの子は、もうすこし勉強をして、できてくれぬだろう?」
こう思う一方には、また、できない我が子が不憫になって、
「あの子の心のうちこそ、いっそう、悲しいだろう。」と、考えて、なにもいうことはできなかったのです。
町の、大きな呉服屋で、小僧が入り用だということを聞いたので、そこへ、吉雄をやることにしました。
「よく、ご主人のいいつけを守って、辛棒するのだよ。」と、お母さんは、いざゆくというときに、涙をふいて、いいきかせました。