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あんごのしんにほんちり
安吾の新日本地理
04 飛鳥の幻――吉野・大和の巻――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,973 字 · 32 页
海を見たことがないという山奥の子供でも汽車や自動車は見なれているという文化交通時代であるが、紀伊半島を一周する汽車線はいまだに完成していない。また、紀州の南端から大台ヶ原を通って吉野へ現れるには、どうしても数日テクる以外に手がないのである。吉野の入口から自動車にのると上の千本までしか登れない。奥の千本へ行くにもテクらなければダメなんだから、大峰山や大台ヶ原は今もって鏡花先生の高野聖時代さ。交通文明というものに完璧に見すてられている山また山の難路なのである。ところが昔の神々は目のつけ場所がちがう。ここが日本で一番早くひらけていた交通路の一ツなんだね。
神武天皇が熊野に上陸して最初に辿ったコースがこれだ。そのころの日本人の生活はどんなグアイかというと、当時の日本の王様、大国主だかその子孫だか誰だか知れんが、その王様のいたミヤコがたぶん今の奈良県三輪らしいね。今はそこに大神神社があって大国主を祀っているが、この神社は拝殿があるだけで本殿はなく、否、建築としての本殿はないが、三輪山という四百五十米ぐらいの姿の美しい山全体が本殿であり御神体なのである。山上や中腹に巨石がルイルイとあるそうだ。