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あんごのしんにほんちり

安吾の新日本地理

坂口 安吾

04 飛鳥の幻――吉野・大和の巻――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,973 字 · 32 页

青空文庫

飛鳥天皇は皇極天皇で、癸卯は書紀では皇極二年に当っています。さて次に毛人大臣の児、入鹿臣□□林太郎が山代大兄及び十五王子らを殺したというのだが、書紀の方には皇極二年に何があったかというと、例の妖しげな前兆や天変地異の数々のほかに、十月六日のところには、蝦夷が病気と称して朝堂へ姿を見せないばかりか、息子の入鹿に紫冠を授けて物部大臣を名のらせたと書いてある。自分の子を勝手に大臣に任じたわけだ。その前年の条には、祖先の廟を葛城の高宮にたて八之をやり、自分と入鹿のミササギをつくったことが記されている。山背大兄が殺されたのは、書紀では翌三年の出来事になっており、またその年には蝦夷がいよいよ甘梼岡に宮城を構えて自分の住居を上宮門、入鹿の住居を谷宮門とよび、子供を王子とよびはじめたことが書いてある。

すると「入鹿臣□□林太郎」という欠字には、どうやら、天皇的な、それに類する語、蝦夷の私製の特別な語があったのかも知れないが、そういう語がはいっていたのではないかね。まだ蝦夷も入鹿も天皇ではなかった。なぜなら、すぐその上に、飛鳥天皇御世葵卯年と明記しているから。

ところが、それから二年目が入鹿と蝦夷の殺された年であるが、それを法王帝説は、