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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
02 第一回 高千穂に冬雨ふれり≪宮崎県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,371 字 · 34 页
そのお産の岩窟が鵜戸神宮という伝えになっているのだが、風光は類を絶して雄大であり、いかにも伝説にふさわしいような美しく荒々しい幻想的な神社である。日向の伝説ではこのへんの物語が特に美しく私は好きであるが、神社の風光がいかにもそれにふさわしい点で日向では指折りの観光地と云えよう。日向の旅は神様の伝説地で食傷気味であり、それは概ね旅人を納得させるに力不足であるが、この神社だけは幻想的な伝説が風光の中に生きているのである。
そのうえ神社まで降りてゆく長い参道がちょうど江の島のように茶店が立ち並んでいて神宮なぞというモッタイぶったところがなく甚しく庶民的なのがよい。バスガールの説明によると、日向では結婚すると女房を鵜戸神宮へつれて行くのが習慣になっており、あの野郎まだ女房に鵜戸詣りをさせないと人に云われるのは男の大の恥となっているのだそうである。
その晩私たちは霧島の山麓高原の地まで車を急がせ神武天皇誕生の地という狭野神社の社務所に泊めてもらった。海辺の山々ではかなり高いところでもまだススキが一面に白い穂をうちふっているような南国日向であるが、奥地になるとさすがに寒く神社での夜明けは一面に霜がおりていた。