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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
02 第一回 高千穂に冬雨ふれり≪宮崎県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,371 字 · 34 页
神武天皇についても神話もしくは伝説として受けとる以外に仕方がないものであるが、この地方の霧島の一峯たる高千穂峯にも高天原の伝説があり、ここと高千穂町とで高天原の本家争いをしたのは江戸の頃からであったらしい。そしてそれは明治初年にも大そうな論争になって文部省から役人が出張したりしたそうだが、伝説を史実とみての争いであるから両者にそれぞれ大きな無理があって、論争それ自身が日本の悲劇を物語るかのようである。ついには戦時に八紘一宇の塔というものができて宮崎は戦争中の聖地ともなった。
この塔が戦後には平和の塔と改称して八紘一宇の字をけずり、また四方に立つ四つの神像のうち武神の像をおろしたが、その工事中あやまって武神の首が落ち修理不能で今もってその像は姿を現すことができないことになってしまった。
鵜戸神宮が神々の伝説を幻想的な風光の中に生かし庶民の生活の中にも生き生きと息づいている大らかな様相にくらべて、強いて伝説を史実化したりすることの無理は伝説のもつ大らかな生命すらも殺してしまう。八紘一宇の塔が平和の塔に変り、それがまたぞろ八紘一宇の塔になりかねないような危なさ悲しさ。