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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
02 第一回 高千穂に冬雨ふれり≪宮崎県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,371 字 · 34 页
私が小学生のころ、県庁所在地で市でないのが二つあった。宮崎と浦和だ。いまもってそんな感じの町。十二月中旬だったが、町の中に冬の気配が何一ツ見られない。図書館の前に県庁があった。県庁の庭に三百人ほどの自由労働者が赤旗をふってデモをやってる。神話の国へきていきなりデモにぶつかったのにはおどろいたが、さすがにノンビリしたもので、警官なぞ一名も出動していない。殺気だったところがなくて、南国はデモも明るかった。
日向は天孫降臨の伝説の地。しかし日向の高千穂町を主張する宮崎県と霧島山の高千穂峯を主張する鹿児島県とが高天原の本家争いをしているのでも分るように、伝説を史実化しようとするのが無理だ。伝説はこれを伝説だけのものとして受けとるのが健全だ。先祖の残した文化的遺産として軽く受けとれば足るのである。
伝説として受けとれば日向のそれは南国にふさわしい明るさにみちている。山の幸、海の幸の話。竜宮へ行って結婚する話。また十六歳の日本武尊が女装して熊襲を退治する話。この熊襲がいまわの言葉に、あなたのような強い人にははじめて会った。あなたの強さは日本一だからヤマトタケルと名のりなさいと云って死ぬ。