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あんごむしゃしゅぎょう

安吾武者修業

坂口 安吾

馬庭念流訪問記

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,724 字 · 22 页

青空文庫

野良の百姓に村の道場はどこだと尋ねて、この村の先生はクワの握り方と剣の握り方の区別ぐらいは心得ているだろうな、なぞと悪態をついて百姓をからかう。すると百姓がやおら野良から上ってきて棒きれを探して振りしめて、

「お前さんぐらいならオレでも間に合うべい。打ちこんできなさい」

というような挨拶をのべる。何をコシャクなと武者修業が打ってかかるとアベコベに打ちのめされて肥ダメへ墜落するようなウキメを見てしまうのである。

立川文庫の場合に於ては、一般に風変りなもの、たとえばクサリ鎌や小太刀や宝蔵院の槍など、別格視されるとともに、異端視され、時には敵役に廻されたり負け役に廻されたり、あまりよい扱いを受けないのが普通で、子供たちの多くもクサリ鎌使いなぞは好まないのが普通であるし、また好まなくなるのが当り前の取り扱いを受けてもいるのである。ところが馬庭念流はそうではない。甚しく別格に扱われているけれども、常にひそかな親愛をもって扱われているようで、いわば万人がそのふるさとの山河に寄せる愛情のようなものが常にこの流派にからんで感じられるような気がするのである。馬庭念流を使う敵役なぞは出てこない。