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あんじゅうこん
安重根
谷 譲次
――十四の場面――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页
社。編輯局兼印刷工場。同時に主筆李剛夫妻の住居でもある、大東共報社のみすぼらしい全部だ。
片隅に壊れかかった寝台。傍らの壁には衣類など雑然とかかり、床は、食器炊事道具など散乱し、おびただしい洋書、新聞紙の類が山積している。反対側にささやかな植字台、旧式の手刷りの印刷機、その他の器具必要品など乱雑に置かれて、中央に李主筆の大机、それを取りまいて古びた椅子四五脚。
正面に小窓二つ。下手に耳戸のような扉。ドアを開けると急傾斜の階段の上り口が見える。窓を通して、人家の屋根、ニコライ堂、禿山などのウラジオ風景。遠くに一線の海。
壁は、露語と朝鮮語の宣伝びらや、切抜きや楽書でいっぱいだ。漢字で「八道義兵」、「大韓独立」、「民族自決」と方々に大書してある。正面の窓の間に旧韓国の国旗を飾って、下に西洋の革命家の写真など懸っている。天井は低く傾き、壁は落ちかかり、すべてが塵埃と貧窮と潜行運動によごれきった、歪んだ屋根裏の景色。
前場と同日、十月十七日の夕刻。二つの窓から夕焼けが射し込んで、室内は赤あかと照り映えている。
李剛――五十歳。大東共報主筆。露領の朝鮮人間に勢力ある独立運動の首領。