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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

あいつも密偵だったんのだ。道理で、何だか変だと思っていたよ。第一、今日なんか、ウラジオへ着いたらすぐ、先生のところへ顔出しすべきじゃないか。それが――。

柳麗玉 (鋭く)朴さん、何を言うんです。

張首明 そのことですよ。今朝早く店へ安重根という人が見えて、髪を刈ったり鬚を剃ったりして、お正午ごろまで遊んでいましたが、午後ちょっと買物をして来ると言って町へ出て行きました。その時、出がけに、今夜晩くなってからこちらの先生をお訪ねするからそう伝えておいてくれ、と私に頼んで行ったから、ちょっとそれを言いに来たんです。

李剛は空箱に腰かけ、一同は張首明と李剛を取りまいて立っている。顔を見合って、しばらく間がつづく。

朴鳳錫 (李剛へ駈け寄って)それごらんなさい、先生。僕は前から、安重根は怪しいと白眼んでいたんです。今朝、太陽と一しょにウラジオへ来ているくせに、正午までこんなやつのところにごろごろしていて、何を話したんだか知れたもんじゃあない。暗くなってから来るとか何とか、いい加減なことを言って、見ていらっしゃい。きっと来ませんから――でたらめな計画を吹聴しといて、自分はスパイを稼いでやがる。