轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ほうえいふんか

宝永噴火

岡本 かの子

「文学界」1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,505 字 · 62 页

青空文庫

そしてこういうとき、必ず慧鶴の心に富士の姿が思い出された。富士のような三国一の高名者になろう。富士のように群峯を睥睨して聳え立とう。これまでも慧鶴は何事かに情熱をそそられるとき、其処に幼い時から眼に親しんだ富士の姿が思い浮べられた。しかし、いかに秀麗で完き形をしている大山でも余り、静まり返りあまり落ちつき払って変化のない冷たさがもどかしく思われた。自分は斯うも緊張して血を沸かしている。だのにあの無生物は永遠の理想を遂げたとでもいうように、白い雪の褶さえ折目正しく取り澄し切っている。彼女はあれで満足なのか、寂しくはないのか。こう富士に問いかけ、疑って見ると、そうばかりでもなさそうである。それは誰にも解されない慾望かも知れない。しかし何等かの方法によって、この死灰の美女に息を吹き返させ自分同様、悩みと苦熱の血を通わしてやり度い。そう思って富士を見ても容易に自分の感情の働きかけに共鳴する様子もなく、むしろ、自分は自分でちゃんと暮らす道があると空嘯いている様子にも見える。慧鶴にはいよいよ征服慾が湧く。世に有り得べからざることも為し得る仙術ということさえある。