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ほうえいふんか

宝永噴火

岡本 かの子

「文学界」1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,505 字 · 62 页

青空文庫

いかなる修業を求めてもこの山を意のままにして見度い。この不思議な意図も慧鶴青年の胸に蓄えられたまま、人間慾と超人慾とのごちゃごちゃに混った青年慧鶴は、清水と富士をあとに残し、何事かを極める為に美濃ノ国へ旅立ったのである。そして大地はこの時、五百年間の眠りを醒し、一大飛躍をすべく、地下数千尺の処で、着々その準備をすすめつつ在ったのである。

富士の噴火は、日本に記録の残っているものから調べると、皇紀一四四一年、天応元年が初めで、それから、同一七四三年、永保三年まで約三百年の間に九回の噴火をしている。その度に大小の災害はあって、ひどいのは須走口一合目に在る小富士を噴出させたり、精進湖と西湖は、もと一つの湖であったのを山から溶岩を流して今のように二つの湖に中断したり、富士にも富士山麓の形態にさえ多少の影響を及ぼしている。そして、その噴火と、噴火の期間には或いは噴煙が認められたり、また、全く休止して静まり返った姿となったり、必ずしも同じ姿ではなかった。

しかし、白河天皇、永保三年の噴火後、約五百年間というものは、すっかり活動をやめてしまい、ただのようなうす煙が絶頂から煙草を燻らすように風に靡いていたに過ぎなかった。