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いえ
家
島崎 藤村
02 (下)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,411 字 · 285 页
「世の中には、君、随分仕たいことを仕ていながら、そう心配されない人もありますぜ。君のようにヤイヤイ言われなくても可さそうなものだ……何となく君は危いような感じを起させる人なんだネ」
「それです。塩瀬の店のものもそう言います――何処か不安なところが有ると見える――こりゃ大に省みなけりゃ不可ぞ」
その時、お雪が階下から上って来て声を掛けた。
「父さん、※が見えました」
親戚の客があると聞いて、正太は叔父と一緒に二階を下りた。
「正太さん、この方がお福さんの旦那さんです」
商用の為に一寸上京した勉を、三吉は甥に紹介した。勉は名倉の母からの届け物と言って、鯣、数の子、鰹節などの包をお雪の方へ出した。
大掃除の日は、塵埃を山のように積んだ荷馬車が三吉の家の前を通り過ぎた。畳を叩く音がそこここにした。長い袖の着物を着て往来を歩くような人達まで、手拭を冠って、煤と埃の中に寒い一日を送った。巡査は家々の入口に検査済の札を貼付けて行った。
早く暮れた。お雪は汚れた上掩を脱いで、子供や下婢と一緒に湯へ行った。改まったような心地のする畳の上で、三吉はめずらしく郷里から出て来た橋本の番頭を迎えた。