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いえ
家
島崎 藤村
02 (下)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,411 字 · 285 页
「鶴ちゃん、お裏の方へ行って見ていらっしゃい」とお俊が言った。
「鶴ちゃんも大きく成ったネ」
「あんなに着物が短く成っちゃって――もうズンズン成長るんですもの」
お鶴はキマリ悪そうにして、笑いながら庭の方へ下りて行った。
「俊、お前のとこの阿父さんは何してるかい」
「まだ何事もしていません……でも、朝なぞは、それは早いんですよ。今まで家のものにサンザン苦労させたから、今度は乃公が勤めるんだなんて、阿父さんが暗いうちから起きてお釜の下を焚付けて下さるんです……習慣に成っちゃって、どうしても寝ていられないんですッて……阿母さんが起出す時分には、御味噌汁までちゃんと出来てます……」
「それを思うと気の毒でもあるナ」
「阿母さん一人の時分には、家の内だってそう関わなかったんですけれど、阿父さんが帰っていらしッたら、何時の間にか綺麗に片付いちまいました――妙なものねえ」
庭の方で笑い叫ぶ声がした。お鶴は滑って転んだ。お延は駈出して行った。お俊も笑いながら、妹の着物に附いた泥を落してやりに行った。
その晩、三吉の家では、めずらしく賑かな唱歌が起った。娘達は楽しい夏の夜を送る為に集った。