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いえ
家
島崎 藤村
01 (上)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,748 字 · 254 页
と呼ばれるお雪も心から喜んで、この青年を迎えた。退屈でいるお福も好い話相手を得た。遽かに三吉の家では賑かに成った。
翌日から、直樹は殆んど家の人であった。子供を可愛がることも、この青年の天性に近かった。お福は、娘でありながら、直樹のようには子供を好かなかった。
「房ちゃん、房ちゃん」と言って、子供を背中に乗せて、家の内を歩く直樹の様子を眺めると、三吉は昔時自分が直樹の家に書生した時代のことを思出さずにいられなかった。
「僕も、ああして、よく直樹さんを背負って歩いたものだ」
と三吉は妻に話した。直樹は生れ落ちるから、三吉の手に抱かれた人である。
「曾根さんが先刻訪ねていらっしゃいましたよ」とお雪は入口の庭のところで張物をしながら言った。
屋外から入って来た三吉は、妻の顔を眺めた。何時山の上へ着いたとも、何処へ宿を取ったとも、判然知らせて寄さないような曾根が、こうして自分等の家へ訪ねて来たということは、酷く三吉を驚かした。
「あの」とお雪は張物する手を留めて、「そこいらまで見物に被入しった序に御寄んなすったんですッて」
「お前も又、待たして置けば好いのに――折角来たものを」