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いえ
家
島崎 藤村
01 (上)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,748 字 · 254 页
こう言って、お雪は萎れた。
直樹とお福とは部屋の方で無心に口笛を吹きかわしていた。
その晩、三吉は直樹やお福を集めて、冷しい風の来るところで話相手に成った。
「さあ、三人でかわりばんこに一ツずつ話そうじゃ有りませんか」と直樹が言出した。「私が話したらば、その次にお福さん、それから兄さん」
「それじゃ泥棒廻りだわ」とお福が混反す。
「そんなら、兄さんから貴方」
「私は出来ません。話すことが無いんですもの」
こう若い人達が楽しそうに言い争った。雑談は何時の間にか骨牌の遊に変った。
「姉さんもお入りなさいよ」と直樹はお雪の方を見て勧めるように言った。
「私は止します」とお雪は子供の傍で横に成る。
「何故?」と直樹はツマラなさそうに。
「今夜は何だか心地が悪いんですもの――」と言って、お雪は小さな手をシャブっている子供の顔を眺めた。
無邪気な学生時代を思わせるような笑声が起った。「ああ、ツライなあ、運が悪いなあ」などと戯れて、直樹が手に持った札を数える若々しい声を聞くと、何時もお雪は噴飯さずにいられないのであるが、その晩は一緒に遊ぼうともしなかった。急にお房は反返って、鼻を鳴らしたり、足で蹴ったりした。