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いえ

家

島崎 藤村

01 (上)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,748 字 · 254 页

青空文庫

が自然と実の旦那でもあった。旦那は、実の開けた穴を埋めさせようとして、更に大きく注込んでいた。

格子戸の填った、玄関のところに小泉商店とした看板の掛けてある家の奥で、実は狭い庭の盆栽に水をくれた。以前の失敗に懲りて、いかなる場合にも着物は木綿で通すという主義であった。彼の胸には種々なことがある。故郷の広い屋敷跡――山――畠――田――林――すべてそういう人手に渡って了ったものは、是非とも回復せねばならぬ。祖先に対しても、又自分の名誉の為にも。それから嵩なり嵩なった多くの負債の仕末をせねば成らぬ。

新しく起って来た三吉が結婚の話――それも良縁と思われるから、弟に勧めて、なるべく纏まるように運ばねばならぬ。こう思い耽っているところへ、弟が旅から帰って来た。

「只今」

と三吉は玄関のところから日に焼けた顔を出した。

もし正太に適当な嫁でも有ったら、こんなことまで頼まれて帰って来た三吉の眼には、いかにも都の町中の住居が窮屈に映った。玄関の次の部屋には、病気でブラブラしている宗蔵兄がいる。片隅へ寄せて乳呑児が寝かしてある。縁側のところには、姪のお俊が遊んでいる。