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いえ
家
島崎 藤村
01 (上)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,748 字 · 254 页
紅く燃えるような帯揚などは、畠に出て石塊を運ぶという人の色彩ではなかった。
三吉はお雪の風俗から改めさせたいと思った。彼は若い妻を教育するような調子で、高い帯揚の心は減らせ、色はもっと質素なものを択べ、金の指輪も二つは過ぎたものだ、何でも身の辺を飾る物は蔵って置けという風で、この夫の言うことはお雪に取って堪え難いようなことばかりであった。
「今から浅黄の帯揚なぞが〆められるもんですか」とお雪はナサケないという眼付をした。「今からこんな物を廃せなんて――若い時に〆なければ〆る時はありゃしません」
とはいえ、お雪は夫の言葉に従った。彼女は今までの飾を脱ぎ去って、田舎教師の妻らしく装うことにした。「よくよく困った時でなければ出すなッて、阿爺さんに言われて貰って来たんですが……」と言って、百円ばかりの金の包まで夫の前に置いた。お雪は又、附添して、仮令倒死するとも一旦嫁いだ以上は親の家へ帰るな、と堅く父親に言い含められて来たことなどを話した。凛然とした名倉の父の気魄、慈悲――そういうものは、お雪の言葉を通しても略三吉に想像された。
「若布は宜う御座んすかねえ」