轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふじ

富士

岡本 かの子

「文芸」1940(昭和15)年11月号~1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,579 字 · 82 页

青空文庫

従来、ただ天気の変りを予知さすだけに、峯の頂の天に掲げ出した、笠なりの雲も、近頃では、その色を黒白の二つに分け、黒の笠雲の場合は風雨のある前兆とし、白い笠雲の場合は風ばかりの前兆としたようなこまかさとなった。

幾人の神人や人間が、この女神に恋をしたことであるだろう。女神は一々、まじめに、その恋を求むる男たちに見向ったらしい。だが何人がこの女神の逞しい火の性、徹る氷の性に、また氷火相闘つ矛盾の性に承け応えられるものがあったろう。彼等のあるものは火取り虫のように却って羽を焼かれ、あるものは虫入り水晶の虫のように晶結させられてしまった。矛盾の性に見向われたものは、裂かれて二重の空骸となった。それ等の空骸に向って女神は、涙をぽたぽた垂しながら、撫でさすり「可哀相に、いのちの愛までは届かぬ方」というというが、誰もその意味を汲取ったものはない。ただ女神にそういわれて撫でさすられた空骸は、土に還ると共に、そこからはこけ桃のような花木、薊のような花草が生えた。深山榛の木の根方にうち倒れた、醜い空骸は、土に還ると共に、根方に寄生して、そこから穂のような花をさし出すおにくという植物になった。