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てらださんにさいごにあったとき
寺田さんに最後に逢った時
和辻 哲郎
「渋柿」1936(昭和11)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,287 字 · 3 页
我々は驚異の海のただ中に浮かんでいる。山川草木はことごとく浄光を発して光り輝く。そういったような気持ちを寺田さんは我々に伝えてくれるのである。こうしてあの小さい電車のなかの一時間は自分には実に楽しいものになった。
あの日は寺田さんは非常に元気であった。電車へ飛び込んで来られる時などはまるで青年のようであった。自分などよりもよほど若々しさがあると思った。その後一月たたない内に死の床に就かれる人だなどとはどうしても見えなかった。これから後にも時々ああいう楽しい時を持つことができると思うと、寺田さんの存在そのものが自分には非常に楽しいものに思われた。それが最後になったのである。