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てらだせんせいのついおく
寺田先生の追憶
中谷 宇吉郎
――大学卒業前後の思い出――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,152 字 · 26 页
後年先生が、理化学研究所と地震研究所と航空研究所とに、それぞれ研究室を持って、若い元気な助手を十数人も使って活溌な研究生活を続けておられた姿を思ってみると、誠に今昔の感にたえないものがある。
ところで四人の実験室であるが、大震災直後のこととて、どうにも部屋の融通がつかないという話で、狭い一つの実験室の中で皆が一緒にやることになった。それも化学教室の実験室を借りての話だったもので、中には大きい作りつけの化学実験台が二つも備えつけてあって、それが邪魔になって困った。先ずやっと身の置き所があるという程度の部屋であった。
それでも生れて始めて題目を貰って、自分で研究を始めるのであるし、実験台の片隅を自分の机とすることも出来るので、一同はすっかり物理学者の卵になった気持で有頂天であった。皆が急に勉強家になるのもちょっと可笑しかった。
朝学校へ来ると、先ず鞄をその机の上に置いて、身軽になって、ノートを一冊もって講義のある時だけ教室へ行く。それが高等学校時代からあこがれていた大学生の生活なのであった。講義は午前中二、三時間だけ聴いて、あとは実験室の片隅で鑢がけや盤陀付けで小さい実験装置の部分品を作ったり、漫談に花を咲かせたり、時にはビーカーで湯を沸して紅茶を淹れて飲んだりしていた。