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てらだとらひこのついそう
寺田寅彦の追想
中谷 宇吉郎
「寺田寅彦の追想」甲文社、1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,683 字 · 40 页
この時代は世界的にいっても、まだ飛行機が今日のように発達しようとは、夢にも思っていなかった時代で、航空船がかなり有望視されていた。それでその事故防止は、大切な問題なのであった。実験を見ると、細長い硝子のU字管一本の実験で、そういう大問題の研究とは、どうしても思えなかった。それでも如何にも面白そうな実験に思われた。そして結局それが機縁となって、三年の卒業実験には、この水素の燃焼を選ぶことになり、初めて完全に寺田先生の指導の下につくことになった。湯本君は卒業しても引きつづき大学に残って、この研究を続行することになり、私は自分の卒業実験としてその手伝いをすることに話がきまったのである。その間に『実験室の思い出』に書いたような話もあった。
この三年生としての一年間の実験室の生活は、非常に面白かったばかりでなく、その後今日までの私の研究生活を規定するくらいの影響を残したものであった。夏休みになって、講義がなくなると、のびのびと解放された気持で、一日中実験室で暮した。真裸の上に白い実験着を着て、ビーカーで紅茶をわかして飲むのが楽しみであった。
先生は三十度くらいの気温になると、急に元気が出て来て、毎日実験室へ顔を出された。