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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页
そうして生きながら焼かれる人々の叫喚の声が念仏や題目の声に和してこの世の地獄を現わしつつある間に、山の手ではからすうりの花が薄暮の垣根に咲きそろっていつもの蛾の群れはいつものようにせわしく蜜をせせっているのであった。
地震があればこわれるような家を建てて住まっていれば地震の時にこわれるのはあたりまえである、しかもその家が、火事を起こし蔓延させるに最適当な燃料でできていて、その中に火種を用意してあるのだから、これは初めから地震に因る火災の製造器械をすえ付けて待っているようなものである。大火が起これば旋風を誘致して炎の海となるべきはずの広場に集まっていれば焼け死ぬのも当然であった。これは事のあった後に思うことであるが、われわれにはあすの可能性はもちろん必然性さえも問題にならない。
動物や植物には百千年の未来の可能性に備える準備ができていたのであるが、途中から人間という不都合な物が飛び出して来たために時々違算を生じる。人間が燈火を発明したためにこれに化かされて蛾の生命が脅かされるようになった。人間が脆弱な垣根などを作ったためにからすうりの安定も保証されなくなってしまった。