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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页
舗道をあるくルンペンの靴音によって深更のパリの裏町のさびしさが描かれたり、林間の沼のみぎわに鳴く蛙や虫の声が悲劇のあとのしじまを記載するような例がそれである。
このような音のモンタージュは俳諧には普通である。有名な「古池やかわず飛び込む水の音」はもちろんであるが「灰汁桶のしずくやみけりきりぎりす」「芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな」「鉄砲の遠音に曇る卯月かな」等枚挙すれば限りはない。
すべての雑音はその発音体を暗示すると同時にまたその音の広がる空間を暗示する。不幸にして現在の録音機と発声マイクロフォンとはその機巧のいまだ不完全なために、あらゆる雑音の忠実な再現に成功していない。それで、盲者が、話し声の反響で室の広さを判断しうるような微妙な音色の差別を再現することはまだできないのであるが、それにもかかわらず適当な雑音の適当な插入が画面の空間の特性を強調する事は驚くべきものである。通り過ぎる汽車の音の強まり弱まり消え去ることによって平面的なスクリーンはたちまち第三次元の空間を獲得して数平方メートルの舞台は数キロメートルの広さに拡張される。遠くから聞こえて来る太鼓の音に聞き耳をたてるヒロインの姿から、一隊の兵士の行進している長い市街のヴィスタが呼び出され描き出される。