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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页
しかし、あの時、いいからはいりますと言ったら、畳も敷いてきれいにしてくれたであったろうが、当時の自分にはその勇気がなかったのであった。
そのころの先生の親しかった同僚教授がたの中には狩野亨吉、奥太一郎、山川信次郎らの諸氏がいたようである。「二百十日」に出て来る一人が奥氏であるというのが定評になっているようである。
学校ではオピアムイーターや、サイラス・マーナーを教わった。松山中学時代には非常に綿密な教え方で逐字的解釈をされたそうであるが、自分らの場合には、それとは反対にむしろ達意を主とするやり方であった。先生がただすらすら音読して行って、そうして「どうだ、わかったか」といったふうであった。そうかと思うと、文中の一節に関して、いろいろのクォーテーションを黒板へ書くこともあった。試験の時に、かつて先生の引用したホーマーの詩句の数節を暗唱していたのをそっくり答案に書いて、大いに得意になったこともあった。
教場へはいると、まずチョッキのかくしから、鎖も何もつかないニッケル側の時計を出してそっと机の片すみへのせてから講義をはじめた。何か少し込み入った事について会心の説明をするときには、人さし指を伸ばして鼻柱の上へ少しはすかいに押しつける癖があった。