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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页

青空文庫

の場面がまざまざと映写されたのであった。

静物が一枚あった。テーブルの上に酒びん、葡萄酒のはいったコップ、半分皮をむいたみかん、そんなものが並んでいた。そしてそれはその後に目で見た現実のあらゆるびんやコップや果物よりも美しいものであった。すべてがほの暗いそうして底光りのする雰囲気の中から浮き出した宝玉のようなものであった。

そうしてそのほかに一枚青衣の少女の合掌した半身像があった。これは両親と自分との居間の間に掲げられたままで長い年月を経た。中学の同級生のうちで自分がこういう少女像の額なんか掛けているのをおかしいと言って非難するものもあった。十九の年に中学を出てから他郷に流寓した。妻を迎えて東京をあっちこっちと移り住んだ。その間に年に一度ぐらい帰省するそのたびにこの少女像は昔のままに同じ※(「木+眉」、第3水準1-85-86)間に同じ姿勢のままに合掌して聖母像を見守っていたのである。

父がなくなってから郷里の家をたたんだ時にこれらの「油絵」がどうなったか。不思議なことにはこれに関する自分の記憶が全く空白になっている。事によると自分が家の始末に帰る前にもう取り片付けに着手していた母の手で何かといっしょに倉の中へしまい込まれて今でもどこかに自分の所有物として現存しているのか、それとも雑品の中に交じってくず屋