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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页
それだから、カメラをさげて秋晴れの郊外を歩いている人たちはおそらく幾平方センチメートルの紙片の中に全武蔵野の秋を圧縮して持って来るつもりで歩いているのであろう。少なくも自分の場合には何枚かの六×九センチメートルのコダック・フィルムの中に一九三一年における日本文化の縮図を収めるつもりで歩くのであるが、なかなかそううまくは行かない。しかしそういうつもりで、この特別な目をぶらさげて歩いているだけでもかなり多くの発見をすることがある。
手近な些末な例をあげると、銀座の裏河岸のある町の片側に昔ふうの荷車が十台ほどもずらりと並べておいてある、その反対側にはオートバイがこれも五、六台ほど並んで置かれてあった。その平凡な光景がカメラの目からは非常におもしろく見えるのであった。昭和通りに二つ並んで建ちかかっている大ビルディングの鉄骨構造をねらったピントの中へ板橋あたりから来たかと思う駄馬が顔を出したり、小さな教会堂の門前へ隣のカフェの開業祝いの花輪飾りが押し立ててあったり、また日本一モダーンなショーウィンドウの前にめざしの頭が二つ三つころがっていたりするのもやはりカメラの目を通して得られた小さな発見であった。