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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页

青空文庫

たとえば飛行機だけ見てもなかなかばかにならない進歩を遂げているようである。おそらくロシアでは日本などとちがって科学がかなりまで直接政治に容喙する権利を許されているのではないかと想像される。

日本では科学は今ごろ「奨励」されているようである。驚くべき時代錯誤ではないかと思う。世界では奨励時代はとうの昔に過ぎ去ってしまっているのではないか。他国では科学がとうの昔に政治の肉となり血となって活動しているのに、日本では科学が温室の蘭かなんぞのように珍重され鑑賞されているのでは全く心細い次第であろう。

その国の最高の科学が「主動的に」その全能力をあげて国政の枢機に参与し国防の計画に貢献するのが当然ではないかと思われるのに、事は全くこれに反するように思われるのである。科学は全く受動的に非科学の奴僕となっているためにその能力を発揮することができず、そのために無能視されてしかられてばかりいるのではないかという気もする。いったい二十世紀の文明国と名乗る国がらからすれば、内閣に一人や二人のしかるべき科学大臣がいてもよさそうであり、国防最高幹部にすぐれた科学者参謀の三四人がいても悪いことはなさそうに思えるのであるが、これも畢竟は世の中を知らぬ老学究の机上の空想に過ぎないのかもしれない。