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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
目に煙がはいったときや、わさびのきき過ぎたすしを食ったときにこぼす涙などは上記のものとは少し趣を異にするようである。それからまた、胃の洗滌をすると言って長いゴム管を咽喉から無理に押し込まれたとき、鼻汁といっしょにたわいなくこぼれる涙に至っては真に沙汰の限りである。
しかしこんな純生理的な涙でも、また悲しくて出る涙でも、あれが出ないと、何かしらひどくいけない悪効果がわれわれのからだの全機構のどこかに現われる恐れがある、それをあのように涙をこぼすことによって救助し緩和するような仕掛けになっているのではないかという疑いが起こる。言わば高圧釜の安全弁のように適当な瞬間に涙腺の分泌物を噴出して何かの危険を防止するのではないか、そうでないとどうも涙の科学的意義がのみ込めない。
ある通俗な書物によると、甲状腺の活動が旺盛な時期には性的刺激に対する感度が高まると同時にあらゆる情緒的な刺激にも敏感になり、つまり泣きやすくもなるそうである。青春の男女のよく泣くのはそのためかと思われる。しかし非常に年を取ったばあさんなどがごちそうを食うときに鼻汁ばかりか涙まで流すのはあれはどういうのだかいささか神秘的である。