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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
前にも述べたとおり大自然は慈母であると同時に厳父である。厳父の厳訓に服することは慈母の慈愛に甘えるのと同等にわれわれの生活の安寧を保証するために必要なことである。
人間の力で自然を克服せんとする努力が西洋における科学の発達を促した。何ゆえに東洋の文化国日本にどうしてそれと同じような科学が同じ歩調で進歩しなかったかという問題はなかなか複雑な問題であるが、その差別の原因をなす多様な因子の中の少なくも一つとしては、上記のごとき日本の自然の特異性が関与しているのではないかと想像される。すなわち日本ではまず第一に自然の慈母の慈愛が深くてその慈愛に対する欲求が満たされやすいために住民は安んじてそのふところに抱かれることができる、という一方ではまた、厳父の厳罰のきびしさ恐ろしさが身にしみて、その禁制にそむき逆らうことの不利をよく心得ている。その結果として、自然の充分な恩恵を甘受すると同時に自然に対する反逆を断念し、自然に順応するための経験的知識を集収し蓄積することをつとめて来た。この民族的な知恵もたしかに一種のワイスハイトであり学問である。しかし、分析的な科学とは類型を異にした学問である。