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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
な天変地異の災禍を軽減し回避するように努力すれば、おそらく世界じゅうでわが国ほど都合よくできている国はまれであろうと思われるのである。しかるに現代の日本ではただ天恵の享楽にのみ夢中になって天災の回避のほうを全然忘れているように見えるのはまことに惜しむべきことと思われる。
以上きわめて概括的に日本の自然の特異性について考察したつもりである。それで次にかくのごとき自然にいだかれた日本人がその環境に応じていかなる生活様式をとって来たかということを考えてみたいと思う。
日本人の日常生活
まず衣食住の中でもいちばんだいじな食物のことから考えてみよう。
太古の先住民族や渡来民族は多く魚貝や鳥獣の肉を常食としていたかもしれない。いつの時代にか南洋またはシナからいろいろな農法が伝わり、一方ではまた肉食を忌む仏教の伝播とともに菜食が発達し、いつとなく米穀が主食物となったのではないかというのはだれにも想像されることである。しかしそうした農業がわが国の風土にそのまま適していたか、少なくも次第に順応しつつ発達しうるものであったということがさらに根本的な理由であることを忘れてはならない。