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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
欧州大戦の終末に近いある年のたぶん五月初めごろであったかと思う。ある朝当時自分の勤めていたR大学の事務室にちょっとした用があってはいって見ると、そこに見慣れぬ年取った禿頭のわりに背の低い西洋人が立っていて、書記のS氏と話をしていた。S氏は自分にその人の名刺を見せて、このかたがP教室の図書室を見たいと言っておられるが、どうしましょうかというのである。その名刺を見ると、それはN国のK大学教授で空中窒素の固定や北光の研究者として有名な物理学者のB教授であった。同教授にはかつてその本国で会ったことがあるばかりでなく、その実験室で北光に関する有名な真空放電の実験を見せてもらったり、その上に私邸に呼ばれてお茶のごちそうになったりしたことがあったので、すぐに昔の顔を再認することができたが、教授のほうではどうもあまりはっきりした記憶はないらしかった。
教授が今ここの図書室で見たいと言った本は、同教授の関係した北光観測のエキスペジションの報告書であったが、あいにくそれが当時のP教室になかったので、あてにして来たらしい教授はひどく失望したようであった。
それはとにかく、自分らの教室にとっては誠に思いがけない遠来の珍客なので、自分は急いで教室主任のN教授やT老教授にもその来訪を知らせ引き合わせをしたのであったが、両先生とも