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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页

青空文庫

こんな土の見えない岩ばかりの地面をひと月もつづけて見ていたらだれでも少し気が変になりはしないかという気がした。

うば鮫を捕獲する一巻でも同じような場面がずいぶん繰り返し長く映写されるので、ある意味では少し退屈である。しかしこの退屈は下手な芝居映画の退屈などとは全く類を異にした退屈であって、それは画中の人生と自然そのものの退屈から来る圧迫感である。詳しくいえば、大西洋の海面の恒久の退屈さでありアラン島民の生活の永遠の退屈さである。退屈というのが悪ければ深刻な憂鬱である。それを観客に体験させる。

始めから終わりまで繰り返さるる怒濤の実写も実に印象の強く深い見ものである。波の音もなかなかよく撮れていて、いつまでも耳に残るような気がした。場外へ出たときに聞いた電車の音がひどく耳立ってきこえた。

こうした映画を見るのは、自分でアランの島へ行って少なくも二三日ぐらい滞在したとほぼ同じような効果があるのではないかという気もした。

アランの島民たちと、現にこの映画を見ている都人士とで、人生というものの概念がどれくらいちがうであろうか、というようなことも考えさせられた。