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たいわ

対話

宮本 百合子

「週刊朝日」1924(大正13)年1月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,561 字 · 18 页

青空文庫

一ふきで火をかける。――どうだ。美事な、自然らしい悪意には、我ながら感服の外はない。

ミーダ 愉しめ! 愉しめ! 押しこめに会っていた本能の野獣ども。今日は火の中のワルプルギスだ。如何に醜悪な罪証も寛大な焔が押し包んで焼き消して呉れる。(とまあ唆かすのだ。)心に遺る罪証の陰気な溜息を恐れない為には、雄々しい仲間をどんと殖して並ばせる。――だが、地の神が衣の裾を一ゆすりする偶然から、俺のこぼした種一粒が、斯那塩梅に芽をふき出そうとは思わなかった。

カラ ああ、あの火花の下をかいくぐり、嬰児の命を庇おうとして、到頭ばったり倒れた母親。――破壊神、呪いの神にお礼を云って戴きます。アーリアン人の喧嘩の時も、餌物は随分ありはしたが、どれもこれも味のない程苦しかった。敵が憎いと云う一念で、胆汁が霊にまで滲みこんでいたと見える。ところが今日の美味さ! 本当の別製だ。どうか自分の同胞たちを救けたいとか、親や妻子、良人ばかりは生かせたいとか、奇妙な願いに充ちているので、さながら甘露の味いがする。

ヴィンダー こせついていた都会も、これで少しはからりと焼原になったな。脆いものだ。