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ちいさなやぎのきろく
小さな山羊の記録
「作品 第四号」1949(昭和24)年10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,402 字 · 19 页
私は若い頃から、衰頽の期間にいつも洟汁が流れて悩む習慣があった。青洟ではなく、透明な粘液的なものであった。だから蓄膿症だと思ったことはない。然し、ねていると胃に流れこみ、起きていると、むやみに洟をかみつゞけなければならない。胃へ流れこむまゝにすると、忽ち吐き気を催し、終日吐き気に苦しんで、思考する時間もなく、仕事に注意を集中し持続するということが全く不可能となるのであった。
私は元来、甚しく鼻カタルを起し易いタチで、鼻が乾いた時にはテキメンにやられるのが習慣であるから、年中、四半分ぐらいずつ風邪気味に、自然の天恵によって鼻がぬれているような体質なのではないかと思っていた。そのぬれ方のひどい時期に吐き気を催すのみで、それだけのことだろうと、長い年月一人ぎめにしていたのである。
去年の八月から、又、これがひどくなった。その時も、まだ、私は、これを蓄膿症だとすらも思わない。私は去年の夏は、すぐ近い矢口の渡しへボートをこぎ、泳ぎに行った。そのために、特別洟汁がでるのだろうと思い、まれに泳ぐからいけないので、泳ぎに馴れゝば却って良くなろうかと考え、体力が疲労していたにも拘らず、強いて水泳ぎにふけった。