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ちいさなやぎのきろく
小さな山羊の記録
「作品 第四号」1949(昭和24)年10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,402 字 · 19 页
私は昏酔中に、雑誌社のSと用談し、そして、Wと会った。まだ見たことのない藤森先生ともお会いした。
すべて、それらが、夢であることを、私はどうしても、信じられなかった。私は、私をたぶらかす女房や女中の奸計を怒り、木刀をふるって、追い廻した。然し、私の歩行は、もはや不自由で、便所へ行くにも、這うようにしか行動ができない。
気違いは、裸になるというが、妙なもので、私も、女房や女中の奸計を怒って狂いたつと、一糸まとわぬ裸体になっていた。いつ、なぜ、そうなったか、記憶がなく、それを羞しいとも思わなかった。
その他の狂態について書こうと思えば、まだ記憶している多くのことがあるし、まったく意識喪失の下に為された多くのこともあるに相違ない。なぜなら、二十五六日の時間のうち、私の自覚している時間は五六日にすぎなかったのだから。たゞ、甚しく特殊な現象について云えば、私が自覚した五六日が、ひどく好色的であったということである。これは、アドルムの過用によって、その方面の神経が刺戟されたせいだろうと思うが、もとより足腰も立たぬ状態のことで、実際の行為は、生理的に不可能であった。