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しょうもんだいだいもんだい

小問題大問題

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,957 字 · 23 页

青空文庫

津島氏は再び妻子に暇を告げて、

「今度は県令になって迎いに来るぞ」

と励ました。それから昼夜兼行、大急ぎで東京へ引き返して、

「漸く閑散の身柄になって来た。ついては先頃の県令の口をお頼み致す」

と大威張りで申入れた。

「津島氏、晩かった。何分もう一月余りもたっているから、悉皆定ってしまった」

という返答。

「当方の勝手で手間を取ったのだから、贅沢は申さん。県令が満員なら、その直ぐ下役でも宜しい」

「下役も満員だ」

「その又下役でも結構」

と津島氏はダン/\下げて行ったが、

「いや、真にお気の毒だが、役向は上から下までもう悉皆詰まって、邏卒が残っているばかりだ。邏卒じゃ厭だろう?」

とあった。

「さあ。小時考えさせて貰おう」

「邏卒も気の長いことを言っていると満員になる」

「それでは二三日の中に返辞をする」

と津島氏は落胆して引き取った。

邏卒は当時の巡査である。県知事から巡査とは余り酷い落ちようだから、津島氏も大分考えたが、背に腹は換えられない。結局、県令を振り出しに子爵まで進む筈のところを、一番下の邏卒から身を起すことに肚を極めた。日暮れて道遠し、もう四十を越していた。