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しょうもんだいだいもんだい

小問題大問題

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,957 字 · 23 页

青空文庫

寿一や、前車の覆るは後車の戒だ。お前にも将来必ず大問題が小問題の恰好をして来る。その時気を落ちつけて能く見分けをつけることが肝心だよ。お祖父さんのようにヘマな真似をしないで巧くやっておくれ」

と老人は生きた教訓を与えた。

「必ず気をつけて出世します」

と津島君は盟った。

しかし老人が苦に病んだ県令から邏卒へのガタ落ちも仔細に分析して見ると必ずしも全然的失敗でない。親としては子の出発点を少しでも容易にしてやれば、それで責任は果している。生存競争はリレーだ。一足飛びに子爵になって妻子眷属を決勝点まで連れ込んでしまうのは考えものである。登り詰めれば降りる外に道がない。津島氏は邏卒になった為め東京に定住して息子達を立派に教育することが出来た。長男、即ち津島君のお父さんは工学士で、或建築組の技師長を勤めた。建てた家は先頃の震災で大抵崩れてしまったが、それでも華族の長男よりは遙かに多く社会に貢献している。叔父さん達も矢張り民間だが、現に小成金が一人ある。津島君自身にしても、大学を好い成績で卒業して平社員ながらも前途を嘱目されている。然るに津島氏を呼び戻した旧藩の重役初め国元へ居残った連中は、その後士族の商法に手を出して、身上を失くしたものが多い。