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こむらたんさい
小村淡彩
宮本 百合子
「女性」1926(大正15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,488 字 · 23 页
せきは、瞬間訳が分らないで、ろくの、黒くて皮膚の薄い、何だか臭そうな顔を見詰めた。
「――あらお前さん女中に来たんでないの」
「女中に来たんだけどね、重次さんが、ここのおかみさんはお嫁に世話してくれるったから」
「まあ、一寸おかみさん、おかみさん」
せきは、大陽気になって、後からいしの肩をたたかんばかりに声をかけた。
「このひとは、おかみさんがお嫁の世話をしてくれるっていうんで女中に来たんですて!」
いしは、面倒くさそうに、
「冗談じゃあないよ」
と呟いた。
「さあ、お前さん、このひとにあっちこっちの勝手を教えてやっとくれ、二三日だって何かのたそくにゃなるだろうから」
数日経つうちに、ろくは、計らず一種の人気者となった。ろくの抜けているのはもう疑いなかった。彼女は、はっきり自分の貰う給金の額もききたださず、小松屋にいることを承知した。云いつけ、誰かが引廻しさえすれば、彼女はその後にくっついて、のたのた外鰐の足どりで何でもした、泥仕事でも、台処でも、苦情などは些も感じないらしい。いしは、最初考えていたのとは、全然違う目論見で、ろくをそう厭だとも思わなくなった。