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こばやしたきじのおかあさん
小林多喜二のお母さん
中野 鈴子
「ゆきのした 第四号」1952(昭和27)年5月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,345 字 · 3 页
小林多喜二のお母さん
あなたの長男である多喜二さんが死なれてから
十九年の日が流れています
そして
あなたは八十才になられました
この十九年の年月は
お母さんにとって
どのようなものでありましたでしょう
戦争が敗けて
日本共産党の人たちが赤い旗をかかげて
刑務所から出てきた時
あなたの喜びとかなしみはどんなでありましたでしょう
その人たちが子供も育っている家庭を形作っているのをながめられたときの
あなたの気持ちを思います
お母さん
多喜二さんがはじめて上京されたのは
昭和五年の一月でした
かがやかしい文学的抱負にもえ
お母さんを伴って上京されました
吹雪の北海道から
晴れ上がった東京へ来られた時
お母さんはしあわせに思われたでしょう
或る夏のあつい日にお訪ねすると
裸で原稿を書いておられる 多喜二さんの背中を
お母さんはウチワで風を送っていられました
下積みのくらしのほこりの中に
愛と働きとを一すじに堪えてきた
やさしい目 力をこめた骨ばったアゴ 肩 手
勤労と献身の愛の中に
あなたの息子は
チビタ下駄 破れたマント
こごえた手に 息を吹きながら育って行った
一文菓子やの ガタガタ と窓ガラスが鳴る 半こわれの二階の雪あかりの中で