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こばやしひでおとび
小林秀雄と美
中谷 宇吉郎
「小林秀雄全集月報第五号」新潮社、1956(昭和31)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,137 字 · 7 页
しかし何といっても、山水長巻の方を優れた芸術品と見る方が妥当である。
それで問題は、美に普遍妥当性があるか否かという、哲学青年の初歩の問題に帰することになる。これは、そういう普遍妥当性を認めなくては、美は存在しないので、いやでも認めざるを得ない。即ち九九・九九九パーセントまでの人間が認めなくても、〇・〇〇一パーセントの人間が認める「本当の美」があると仮定していることになる。
こういうふうにいうと、世界中の全部の人間が認めないものは芸術ではないといった前の言葉と矛盾するようであるが、そうではない。〇・〇〇……といくら小さい数になってもよいが、それは零であってはならない。零を考えると、別の議論になってしまうからでる。
科学の世界における真の妥当性は、たいていの人が承知する。しかし芸術の世界での美の妥当性には、いろいろ議論があるようである。その理由として、科学では、測定値にしても、法則にしても、誰が再検討してみても同じ結果になるから、普遍妥当性がある、と一般に思われている。しかし法則は常に進化しているし、測定値も、本当は同じ値は二度出て来ないのである。