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こいずみやくものかていせいかつ
小泉八雲の家庭生活
萩原 朔太郎
室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,379 字 · 33 页
夫人にとってのヘルンは、最も信頼する良人であったと共に、一面ではまた『大きな駄々ッ子坊や』でもあった。ヘルンの趣味はすべてにおいて庶民的で、儀式ばったことが嫌いなので、フロックコートなどの礼服を非常に嫌い、常に野蛮人の服と称し『なんぼ野蛮の物』と言っていた。それで学校に式のある時など、他の教師は皆礼服で列席するのに、ヘルンは一張羅の背広で押し通していた。しかしそれではあまり体面に関するので、夫人が是非フロックコートを新調するようにすすめたが、頑として中々きかない。それで夫人から『あなた、日本のこと、大変よく書きましたから、お上で、あなた賞めるためお呼びです。お上に参るの時、あなた、シルクハット、フロックコートですよ』などと、子供をだますようにして説き伏せられ、やっと礼服を新調したけれども、やはり少しも着ようとしない。それで式のある日などには、夫人が無理に押えつけ、女中までが手伝って騒ぎながら、まるで駄々ッ子を扱うように、あやしたりすかしたりして、厭がるのを強いて着せねばならなかった。
いわゆる『文明』を嫌ったヘルンは、反対にあらゆる自然を深く愛した。