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こいずみやくものかていせいかつ

小泉八雲の家庭生活

萩原 朔太郎

室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,379 字 · 33 页

青空文庫

特に虫や鳥やの小動物を愛し、蛇、蛙、蝉、蜘蛛、蜻蛉、蝶などが好きであった。それらの小動物に対して、彼はいつも『あなた』という言葉で呼びかけ、人間と話すようにして話をした。そうした彼の宇宙的博愛主義は、草木万有の中に霊性が有ると信じられてるところの、仏教的な汎神論にもとづいていた。それ故彼は、動物を始め植物に至るまで、すべて生物を虐めたり殺したりすることを非常に叱った。女中が蛇を追ったといって叱られ、植木屋が筍を抜いたといって怒られ、はては『おババさま』の姑でさえが、枯れた朝顔をぬいたというので『おババさま好き人です。しかし朝顔に気の毒しました』と叱言を言われた。

ヘルンはまた猫が特別に好きであった。松江に居た時も焼津に居た時も、道に捨猫さえ見れば拾って帰り、幾疋でも飼って育てた。夫人と結婚して間もない頃、雨でずぶ濡れになった小猫を拾って帰り、その泥だらけのままの猫を懐中に入れて、長い間やさしく暖めていた。夫人の告白によれば、自分の良人に対する真の愛は、その時初めて起ったという。これほどにも情深く、心根のやさしい人があるかと思い、ヘルンに対して、何かいじらしく涙ぐましいものさえも感じたというのである。