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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
以下は私の日記の抜書を一つの報告文体に作り上げたものです。ですから中には彼女に関する貴下の御記憶と重複しているところもありましょう。または貴下の御人格を冒涜するような章句もありましょう。なおまた、敬語を抜きにした記録体に致しましたために、無作法に亙るような個所が出来るかも知れませんが、何卒、悪しからず御諒読を願います。何れもその時の私の心境を率直、如実に告白致したいために、日記の記録する通りに文章を取纏めたものですから……。
姫草ユリ子が私の病院に来たのは昨、昭和八年の五月三十一日……開業の前日の夕方であった。見事な、しかし心持地味なお納戸の着物に、派手なコバルト色のパラソル、新しいフェルト草履、バスケット一個という姿の彼女がションボリと玄関に立った。
「コチラ様では、もしや看護婦が御入用ではございませんかしら……」
診察室の装飾に就いて家具屋と凝議をしていた私の姉と、妻の松子とは、顔を見合わせて彼女の勇敢さに感心したという。ちょうど二人雇っていた看護婦ではすこし手が足りないかも知れない……と話合っていたところだったので、早速、外来患者室に通して、私と三人で面会して一応の質問と観察をこころみた。