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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
倹約家の父は珍しく金口を吹かしながら、いつになくニコニコした口調で申しました。
「お前は新聞記者になりたいって言った事があるだろう」
「ええ。そんな事を考えた事もありましたわ」
「写真も嫌いじゃなかったろう」
「ええ大好きですわ」
父は、私がいろいろな新聞や雑誌に投書したり、写真サロンに入選したりしている事を知っているのに、どうしてコンナ事を改まって尋ねるのだろうとチョッと不思議に思いました。
「……だから、ちょうどいいと思うんだがね。大阪の新聞社で女の運動記者を欲しがっているんだ。女学校の運動部を訪ねてまわって、話を聞いたり、写真を撮ってまわったりするのが仕事だそうだがね。昨日わざわざ森栖校長先生が俺の役所(営林所)に訪ねて来られて、お前が承知してくれさえすれば、先方では願ったり叶ったりだと言っている。洋行も出来るようにして遣ると言っているそうだから、コンナ良い口はまたとないと思う。俸給は百円でボーナスは三月分だそうだが、御承知ならば私が大阪へ電話をかけるから、直ぐにも出発出来るだろうって言う事だがね……」
と言うお話でした。
私はあの時に、よくあれだけ落ち着いておられたと思います。